お久しぶりです。

ブラジルW杯のような毎試合レビューが出来ればと思いつつ、時間が取れない為今回はレーヴドイツEURO2016版の戦術について簡単に書くことでお茶を濁します。

ブラジルW杯でドイツが取った戦術は撤退守備であり、状況に合わせてボール保持を譲りカウンターにも対応できるスタイルでした。同時にセットプレーをかなり重視しております。
これは前年に3冠を獲ったハインケスバイエルンでよく見られたものです。

従来のレーヴはテンポフットボールを掲げ速いパスワークで支配していく形だったのですが、ブラジルでの戦術がハインケス式に依ったのには大きな理由がありました。
それはブラジルの気候です。

テンポを上げてハイプレスを行うサッカーは自らの首を絞めるだけになる為、ハインケス式に見られたサイドハーフがサイドバックの後ろまでカバーに入るサッカーを選ぶことに。

何故か就任1年目を終えたグアルディオラ式との融合が取りざたされましたが、実際のところペップバルサが中心に残っていたスペインはグループで消えており、所謂ティキタカのポゼッションサッカーはブラジルの気候とはミスマッチだったように思います。


さて、前置きはここまで。
ブラジルの気候であれば引くサッカーは効果的でした。コスタリカの躍進やオランダが見せた超守備的戦術等は典型的な例だったのではないでしょうか。

しかし今回の舞台はフランス。
当然慣れた気候の中で、それぞれが持ち味を出した戦術を選択出来るようになり、重心を下げることのリスクも増えます。

バイエルンが中心のドイツ代表はやはりバイエルンの戦術の影響を受ける形でW杯後様々な形を試すことになります。
顕著だったのはサイドバックをインサイドに入れる等のグアルディオラのバイエルンが取り入れた形。
しかしW杯後のドイツ代表にはアラバもラームもおりません。
0トップを含めた様々な戦術を実際にはGLまで試すことになります。

ペップバイエルンが今回のドイツ代表に生んだ2つのプラス要素はボアテングとキミッヒです。
ミュラーやノイアーは元からミュラーやノイアーです。2010からスタイル自体に大きな変化はありません。
ゲッツェは明らかに伸び悩みました。
他のスターティングイレブンは殆ど無関係。

ボアテングのパス能力は恐ろしく成長しました。
元々左に居るフンメルスが楔のパスがやたらと上手いのですが、ボアテングはまるでアロンソでも乗り移ったかのようにロングボールを正確に蹴り込む名手に変貌しております。

それから右SBの定位置を得ようとしているキミッヒ。
ラングニックの掌握下のライプツィヒにいたこの若者が今回のEUROに間に合ったのは間違いなくグアルディオラが明らかに厳しい試合でも起用を続けた結果でしょう。(結果的にシーズン中バイエルンにとっていくつかのマイナスがあったことは否定できませんが…)

今回のドイツで一番のミソになっているのは攻撃時の2-2-2-4。
ライプツィヒで、ラングニックは中央の2-2-2-2+両サイドの位置取りでゲームをコントロールする戦術を試しておりましたが。
北アイルランド戦、スロバキア戦、ヘクターとキミッヒが異様に高い位置を取っているのがわかるかと思います。
ヘクターが毎試合走行距離でトップを走っているのは偶然ではないでしょう。(SBだから当然と見る向きもありますが、SBがインサイドに入るスタイルだとここまで数字が伸びません。)

ただ、ラングニックやクロップ、シュミットに代表されるような猛烈なGプレスからのショートカウンターを用いてはおりません。
戦術的な志向はグアルディオラのスタイルに近いです。

今シーズンブンデスリーガでは、同様にシュツットガルト軍閥式のチームにグアルディオラ式の志向をミックスさせたチームがありました。

トゥヘルのドルトムントですね。
ボールをコントロールしつつサイドバックが高い位置を取るのは今シーズンのドルトムントのスタイルに近いです。
何故シュメルツァーとギンターを招集しなかったのか。その回答は未だに出てきません。
しかしヘクターとキミッヒが健在であればその懸念は不要だと現状が証明しているのも確か。

SBがかなり高い位置を取り、両CBもハーフラインまで押し上げている中、4試合のクリーンシートは驚異的です。
ダブルボランチは守備面で信用できるタイプではないのですが、現状はそれをあまり感じさせておりません。

イタリア戦、ポイントになるのは両サイド。

左はドラクスラー+ヘクターが。
右はエジル+キミッヒが。

押し込めるのか押し込まれるのかが大きな鍵になります。
イタリアの両ウイングバック+CB1枚との勝負になるシーンが増えるかと思いますが。

ドラクスラーの侵入、エジルミュラーラインでの破壊。
クロースのセットプレー。
両CBからの崩しのボール。

無数のルートを上手く使い崩すことが出来れば好調のフィニッシャーに最後を託すことも可能です。

本大会前、数十年振りの勝利を上げたイタリアを相手に。
幾度となく敗れてきた先達のリベンジを。

クリンスマン政権後ベスト8以下での敗退はありません。
ここで06以降最悪の悲劇が起きなければ、4度目が見えてくることになります。