前編はこちら(http://football-mansion.blog.jp/archives/45883349.html

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 今夜の試合は重要だ。セルティックが勝利を収めれば16強へ望みを繋ぐこととなるが、負ければ敗退が決定する。

 一方、デンマークでビジャレアルを迎え撃つオールボーは、今夜の結果に関係なく突破の可能性を残している。

 興味深いことに、ナカムラはフィールドに立つ際、ベスト16進出のチャンスについて考えないことを重視している。テニス界ではラファエル・ナダルが、試合の重要度を考えずにすべてのポイントを全く同じアプローチで臨むことを求めている。ナカムラも同じだ。

 彼は、「その試合の持つ意味を考えたりはしない。ピッチに出たら、それがグループとかにどんな影響を与えるかなんて考えない」と語る。

「90分間はただの1試合で、勝ち点3としか見てない。他のこと?終わってから考える。目の前の試合に集中したい」

「ホームで試合ができるのは良いこと。多分、自分たちのサッカーがやりやすくなるだろうし、相手は影響を受けるんじゃないかな。テクニックはユナイテッドの方が上だから、ハードワークしないと」

「チームとしては、ポゼッションを上げるってはっきりさせることが必要。個人的には、もっとボールに触って攻撃の面で貢献したい」

 UEFAチャンピオンズリーグにおいて、セルティックの心臓はホームゲームにある。アウェーでは災難な成績だが、セルティック・パークは欧州トップクラスの要塞である。

 これまで6度のCLで、グループステージにてホームのセルティックを破ったチームはバルセロナのみ。時が進むにつれて選手達が変わり、監督も変わったが、セルティック・パークの観衆はそのままだ。

「サポーターが手助けしてくれる」と、ナカムラは口にした。「セルティック・パークがこのような夜みたいになることは、誰もが知ってる。素晴らしい雰囲気で、僕らを後押ししてくれる」

「危機的なのは知ってる。オールド・トラッフォードで負けた分を取り返さなきゃいけない。個人的には、自分のフットボールを見せつけ、違いを生み出したい」

「全員がチームを助けながら個人の仕事もしなきゃいけない。チームで守ってチームで攻める必要がある」

「まとまっていかないと。チームメートを孤立させたままじゃダメ。すべての時間で、チームとしてプレーする」

 今夜の試合は、日本でも注目度が高いものになるとみられる。東京や横浜のどこかで、次のナカムラになる少年がテレビに張り付き、セルティックのヒーローが欧州王者を相手に素晴らしいプレーをするところを見るだろう。

 ナカムラも、かつてはそのような少年だった。20年前、彼はプロになることを夢見て、ACミランやバルセロナがヨーロッパの覇権を争うことに憧れを抱いていた。

 神秘的で魔法のようなフットボールの環境を見て、彼は“こうやったらどうなるんだろう”と考えた。彼が日本とイタリアでプレーした後、セルティックはその才能を世界中に見せつける舞台を提供した。

 引退後にどこで何をしようが、ナカムラはいつだってセルティック・パーク、カンプ・ノウ、オールド・トラッフォードやサン・シーロでの夜を思い出すだろう。彼の思い出は、セルティックで作られるのだ。

 彼は語る。「子どもの頃、サッカーを始めた時には、日本にプロリーグすら無かった。最高レベルの舞台でプレーすることを夢見ていたけれど、プロになった時も本当に海外でプレーするとか、あり得なかった」

「そういうのを全部考えると、これは自分にとって夢の舞台。こういう試合は自分の中にずっと残ると思うし、セルティックのためにベストを尽くしたい」

「ただ点だけをとりたいって意味じゃなくね。前回ここでやったユナイテッド戦のことというと、みんなFKを覚えていると思うけど、自分にとってはそんなに大事なことじゃない」

「確かにFKを決めたこともそうだけど、あの試合での全プレーのことを考える。いいことも悪いこともね。そこから学べるし。一本のキックじゃなくて、一番大事なのは試合を通じて全部のシーン。そういうふうに考えて成長しなきゃいけない」

 2年前、シュンスケ・ナカムラはピッチへ行き、思い出を作って試合を終えた。我々は、デジャヴを体験できるだろうか…全てにおいてね。