A moment of magic gives Celtic a lead!」

 この実況を覚えてる人も少なくないだろう。2006-07シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ・グールプステージ第5節、セルティック対マンチェスター・ユナイテッドのワンシーンだ。

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0で迎えた81分、中村俊輔の左足から放たれたFKが、クラブを史上初のベスト16に導いた。

 しかし、物語の続編を記憶している人は多くない。両クラブは、2年後にグループステージで再激突。アウェーで0-3の大敗を喫したセルティックは、敗れればグループ敗退が決まる状況で、本拠地セルティック・パークにマンチェスター・ユナイテッドを迎える。

 先日、友人からこの試合のマッチデープログラムを譲っていただいた。


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 伝説の一撃から2年が経ち、崖っぷちに追い込まれた同クラブは、再びこの男に助けを求めたかったのだろう。プログラムには、彼の特集が6ページにわたって掲載されている。

 先に話すのは無粋かもしれないが、結果から言うと、“救世主”は90分間ベンチから試合を見守り、チームは引き分けた。

 彼が試合に出ていればどうなっていただろう。またもチームを救っていた可能性もあるが、クリスティアーノ・ロナウドやパトリス・エブラを相手に消えてしまったかもしれない。

 前置きが長くなったが、そんな妄想を広げながら読んでいただきたい。タイトルは「Can Lightning Strike Thrice?」

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 ゴードン・ストラカンの時代の到来を告げる時が来た。その中心に相応しいのは、このクラブで自身の歴史を刻んでいる男、シュンスケ・ナカムラだ。

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年前から時間は止まっている。日本から来た男が魔法のような素晴らしいFKを決めてマンチェスター・ユナイテッドから10の勝利を手にし、セルティックを史上初のベスト16に導いたあの時から。

 あの夜の試合のプログラムでも、ナカムラのインタビューは「この世界のすべてがステージだ」というヘッドラインに掲載された。何百万もの人間が見守る中で35ヤードからネットへ突き刺した後、セルティックのスターはまさに世界的な怪物となっている。

 状況が変われば変わるほど、本質というのはそのままだ。この2年間、彼はセルティックのかつてない栄光を支え続けている。今日もまた、通訳のマコトとともにテーブルの端に着き、試合の展望を語っている。

 彼の前には2006年のプログラムのコピーが置かれた。吉兆となるか?歴史は繰り返されるのか?ナカムラは肩を竦めて笑う。迷信深いタイプではないが、エドウィン・ファン・デル・サールからまたもFKを決めることになれば、それも変わるだろう。

 衝撃的な瞬間だった。すべてのセルティック・サポーターは、ナカムラがFKを決めた瞬間にどこにいたのかを覚えている。マーティン・グレイグ氏の著書『ナカムラの禅精神』の中には、「あのシュートは世界中に響き渡った。トールクロスから東京まで」という、的を射た1文がある。

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万の観客と数百万のテレビ視聴者が見守る中、ナカムラは6人の壁の上から、6フィート以上のGKすら越えてトップコーナーに突き刺し、永久的な信頼を掴み取った。セルティックの運命を握る瞬間、クラブのレジェンドになるワンチャンスに、彼は何を考えていたのだろうか。

「スタジアムが満員で、すごい大きな歓声が起きていたけど、全部遮断しようとした」彼の芸術性を解き明かすインタビューで、ナカムラはそう答えた。

「正直、歓声が頭に入ってくる時っていうのは、決まらない。良いボールが蹴れるのは、平常心でいられる時」

「よく説明できないんだけど、FKって別のステージだと思ってる。ボールをセットして壁とキーパーの位置を見るんだけど、その時にフリーキックに『入れてる』と、だいたい決まっちゃう」

「壁とかキーパーの位置とか確認した時になんか違うと思ったら、入らなかったりする。上手く伝えられないんだけど」

(後編はこちら http://football-mansion.blog.jp/archives/45883932.html)