夏場には絶望の淵に立っていた2018シーズンを終え
長い長い灰色の日々が明けて
ようやく新しいシーズンがやってきた。

昨シーズン感じた絶望はチームの伸びしろが消えたことだ。
とてつもなく退屈でチャレンジもなく選手の成長も見込めない。

監督を代えようにも尹より優秀な監督は希少で。
非常に質の悪いサッカーを続けながら不協和音がどんどん増えていく。
それでも代えるべきだったと思う。
そして更新しないことが発表された時、サポーターからは批判が噴出した。

初タイトルを2つもくれた指揮官への愛情はわかる。
しかしピッチ上で起こっているのはディストピアで、これは別に批判を浴び続けた柿谷が作ったものではない。

個人的には賛成だった。後任を探す時間も出来た。
ロティーナの名前が上がり、味スタにも足を運んだ。
少なくとも終盤のセレッソの試合を見るのはただ苦しかった、そしてヴェルディのサッカーはとても楽しかった。

フロンターレ戦とレイソル戦は確認した。
この2試合についても言いたいことはあったが結局書ききれず。
マリノス戦は確認する気も起きず結局観なかった。ロティーナが次のシーズンで生み出す何かの方が遥かに大事で、マリノス戦は感傷の産物に過ぎない試合だったとすら思う。
尹は勝って、慕われた選手と笑顔で退任した。それでいい。
同じ相手とのホームゲームで、誤審で失った勝ち点3をきっちり得たのであればいいじゃないかと。
開幕戦で序盤のゴールを取り消され、終盤に値千金の同点ゴールを決めた柿谷の姿はそこにはいない。

前置きが長くなったが、2018年のサッカーは失望の塊だった。マンシャフトもセレッソも。
唯一乾と香川の代表でのプレーだけが楽しかった。
乾のミドルがクルトワを破った時叫んだのは俺だけじゃないだろう。

セレッソの去年のベストゲームはゼロックス。そんな馬鹿な話があるかと。

オフに大きく陣容が変わった。
ユース育ちの山口杉本は自分の求めるものの為にチームを去った。
山村はかつて選んでいたかもしれない2連覇中の最強クラブへ。
長年チームを支えた茂庭酒本や守備陣の貴重なバックアップだった田中裕介も下のカテゴリーにプレーの場を移した。

獲得した選手は皆一様に戦術理解度の高い選手だ。
都倉、奥埜、藤田、デサバト、ブルーノ。
山口、杉本がどちらも戦術遂行という面では難ありで、ロティーナのタスクをこなせるとは思えなかったこともあり、結果的にプラスだったと個人的に思っている。

迎えた開幕戦。対戦相手はヴィッセル神戸。
陣容はポドルスキ、イニエスタに加えビジャ、山口、西
個人的には西が非常に気になる。役割の遂行という面で彼より長けたSBはJにはいない。

試合前のスタメン。
3バック、ワイドに丸橋船木、ボランチにソウザ奥埜、柿谷ワントップ。シャドーは清武と水沼。
船木?
ほらースタメンみるだけでちょっと楽しそうじゃん。
控えはあらゆるシチュエーションに対応できそうな様々な駒が。
4バック変更も可。アンカー入りも可。パワープレーも可。サイドのドリブラーの駒もある。ジョーカーもいる。

相手はVIPが3トップで先発
序盤、ロティーナの仕込みが見えるボール運びからチャンスを作るもすぐに押し込まれ始める。
原因は偽9のイニエスタ。
両ワイドにはいつでもカットインからシュートを狙えるポルディとビジャ。
真ん中にはピッチのどこにでも数的優位を作りだす偽9。

セレッソは5-4ブロックの迎撃守備にシフト。
細かいライン調整はするが、右も左も2人がかりで抑え込まないと止まらないタレント。

ビジャの素晴らしさなんてのはここで語る必要もないだろうが、37歳の彼があれだけのキレを維持しているとは思いもよらなかった。
トラップの身体の運び方を見て正直脂汗が出た。アジリティが…。
確認したらMLSの4年間で3試合に2ゴールペースを維持してる相変わらずの化け物なので。
並みのチームは簡単にやられると思う。
ポルディやトーレスの比じゃないレベル。
軽やかにボールの上を飛んでるから。これで経験者なら多分伝わる。

守備に専念している山下を軽々とぶち壊していく。
サシじゃ無理。

それでも丁寧にラインを作り前半を耐えきった。
ソウザのところは何度か綻びが出来てたので、このやり方でソウザのボランチは穴を作る。一列上げたいが。
奥埜が要所で気の利いたプレーを見せる。
あと柿谷がたまにやるプレスバックが実に嫌らしいね。
あれでインターセプト数結構多いから意外と守備貢献もしてるんだけどそこの評価はあまりされない。
木本はポルディとのやり合いで一歩も引かず。
彼も今季のサッカーの軸の1人になるはず。

ヴィッセルではビジャ、イニエスタと共にやはり西が厄介。
実に頭が位置取りがずるいなぁ。

押し込まれてる左を押し返さないと中々苦しい。

後半、少しライン設定を上げているものの大きな展開は変わらず。
右サイドの船木水沼の関係が悪い。
水沼がワイドを遣えれば違うんだけど。去年からどうも直接中に入りたがるのがずっと難点。

後半20分最初の交代。
水沼→都倉
都倉頂点で柿谷を一列下げる。
更に5分後に清武→デサバト
この2つの交代が絶妙だった。

ベストだったのは一列下がった柿谷と一列上がったソウザの距離が近づいたことだ。
この2人はプレーイメージが共有出来ている。
ソウザが最もプレーしやすい選手に挙げるのが柿谷だというのは1つのポイント。

前線では都倉が身体を張ることで柿谷ソウザのスペースを空けた。
中盤ではデサバトは南米仕込みのマーキングでイニエスタを試合から消し始めた。

逆に神戸は古橋を入れたことで偽9による数的優位がなくなり網に頻繁にかかるようになる。
ここまでの交代が試合の流れを変えることに。

ここで輝きを取り戻した柿谷が2つの決定機を演出するが惜しくもゴールならず。
しかしソウザへのパスはビューティフル。

丸橋からのシンプルなロングボール。ソウザの中央でのドリブルからソウザ→柿谷→都倉→ソウザのコンビネーションからシュート。
多彩な攻撃を見せ、流れが変わったこの時間帯、このソウザのシュートで得たCKから待望の瞬間が訪れる。
丸橋の精度の高いキックから、木本のフリックに飛び込んだのは山下。
ビジャの相手で苦しんだ彼へのご褒美だったのかもしれない。
素晴らしいランニングからのヘディングでゴールをこじ開けた。

再びブロックを作る。
イニエスタを執拗に潰してバイタルから追い出すデサバト。
噂に違わぬいい選手だなと。
何故かファールを取られたポドルスキへのタックルも綺麗にボールにいってるし。

88分には柿谷→松田の交代。

シャドーの位置に松田。
これも非常に嫌らしい。馬力があってシュートが決して下手ではない松田はサイドの守備を助けながら前にも出ていく。

危なげなく時計を進め試合終了。開幕戦で大きな勝ち点3を獲得。

ロティーナ体制としてはチーム作りはまだ始まったばかりだが、手駒の多彩さと指揮官の采配の妙は1試合で十分見せたと思う。
別メニューが多かったデサバト、清武や直前のテストマッチを回避した柿谷もまずまず。
離脱中の高木やメンバー外の福満等もいるので、ロティーナイバン小寺体制で徐々に浸透することを期待する。
新戦力はどれも上々。
今回は出場がなかったブルーノ藤田がどうなるかは注視したいところ。

対するヴィッセルだが、ビジャは今もジョークラスのモンスターだと思い知らされた試合だった。
大怪我が無ければ15点ぐらいは…。
はっきり言って全く馬鹿に出来ないぐらい強いチーム。アンカーとCBに1枚ずつ優秀な選手が取れたらなぁ…。

最後に山口蛍について。
尹を慕う彼の心情は理解しよう。ただ、個人的にもう1年あのサッカーを続けることは御免蒙るというのが本音。
移籍を決断したことは本人の判断。ヴィッセルでいい選手になってくれればと思う。
十分な移籍金を残したのも確か。発言が余計だっただけの話で。
我々は残った選手を応援する。どんな事情があれど、ピッチ上で応援するチームの為にプレーできる選手をサポートするのがサポーターだろう。

ただ、よく挨拶に来てくれたと思う。同様のケースなら逃げる選手もいるだろう。
結果としてネガティブな2つのシーズンだったとはいえ、彼はうちの元キャプテンだったということだ。