お盆休みも終わり、遅めの夏休みを取ることが出来た事で、ようやく今年初めて清水エスパルスの試合を観にスタジアムへ赴くことが出来た。

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4年前、アフシン・ゴトビ前監督が就任し指揮を執った頃。ちょうど日本平スタジアムへと足を運び始めた自分にとって、ゴトビ前監督が離日する日に今年のエスパルスを初めて生で観ることが出来るのは「何とも皮肉な感じだなぁ」
などと個人的に思いながらスタジアムへ向かった。

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・大榎エスパルスのこの日の布陣
就任間もない大榎監督がこの日に前線に送り込んだ選手は石毛・高木(善朗)・高木(俊幸)・大前ちびっこ軍団4人。
中盤の底は本田・六平、左サイドバックにはイ・キジェが大榎監督就任以来名を連ね。右に吉田豊。センターバックはヤコヴィッチとキャプテンの平岡。GKには櫛引の布陣。

試合開始から特に目を引いたのはやはり前線のちびっこ軍団4人。石毛が頂点の形であったが、4人が流動的にボールを受け狭い距離で多くのパス交換を行う事で局面の打開を図るシーンが特に目立った。(例えるならフットサルの様な動いて受けて、パスの出し手がまた動いた先でリターンを貰う様な動きのある展開)
ちょうど先日、国際ユースサッカーで静岡ユース選抜の攻撃に少し似ているなと感じる部分も多くあった。静岡ユース選抜には清水ユースの選手も多かったので、つい先日までユースの監督を務めていた大榎監督の求めるサッカーというのは、こういうものなのかもしれない。
ただ、まだまだ戦術が浸透しきれてないのかフィニッシュへの危険なエリアでのパスのイメージシンクロだったり動きだしの決定的な部分はミスが目立った。

・このサッカーはエスパルスサポーターを喜ばせるはず 
 
まだまだ粗さの目立つ歯がゆい感じではあったが、「このサッカーは清水エスパルスのサポーターを喜ばせるだろうな。」という期待は感じた。理由は簡単である。
1、細かいパス交換やドリブルから打開する日本人好みのサッカーである事。 
2、ゴトビ前監督がここ2年程やっていたサッカーが『魅了する』という点では全く面白みに欠けるサッカーであった事。

個人的にゴトビ体制で『面白い』と感じていたのが2シーズン目の俊幸・大前のカウンターが決まっていたシーズン 。それ以降は大前の欧州挑戦、俊幸の不調もあり、バレー頼みだとか色々つまらないサッカーを観続けていたサポーターにとっては反動で今面白く見えているのではないだろうか?(ただし、『面白い』と『強い』『戦える』サッカーは同意語になるとは限らない)

 ・前半に目立った守備の欠点
 選手もイキイキしている。石毛はやりたくもないサイドバックから本来の前線へ移り、右サイドの吉田は右サイドを駆け上がれる。本田の散らすパスも有り、中央の相手が固まり始めた頃、中央エリアでボールを持つ事が多かった高木(俊)が左ウイングに大きく開く動きをしてゆさぶりをかける。

良い事だらけの様に見えて、守備構築はまだまだなのかもしれないと感じるシーンが特に前半はあった。 ひとつは相手チームの2列目の選手をボランチに入っている選手が捉えきれていない事。センターバック陣はトップの選手をマークしながら引いて守備をするので中々飛び込めない。
この点だけは早く何かの形で改善してほしい。でなければ、昨シーズンのマリノス戦の様な5失点等も十分考えられる。この日に関して言えば、札幌が常にロングボールを中心にしてくれていた事が守備崩壊を防いだ一因でもあったと思う。

2つ目はあんまり言いたくはないのだが、イ・キジェの裏のスペース。彼は以前見たよりずっと良くなっている。
かつてのDFラインでドリブルするような変なプレーはこの日無かった、守備意識も高かった。反面、ボールサイドへの意識が高いのか背後のプレーヤーを確認する動きが非常に乏しい。死角から不意に裏のスペースに飛び出されたら決定的なピンチを迎えかねない。

  ・監督交代で活躍する場面が増えそうな選手・減りそうな選手
これは 仕方ない事である。監督が変われば求めるものも変わる。まだ1試合を見ただけで不確かな部分も多いが、こうではないかという予想を勝手に書いてみよう。

■出場機会・活躍が増えそうな選手■ 
・高木(善)…ノヴァコヴィッチの様な選手をおかないバージョンの顔をチームに出させる場合出場機会が増えそう。
・金子翔太…同じ
・吉田豊  …中央エリアでボールを回す機会が増え、前に出やすくなった。中に入りサポート役にも必要。

■出場機会・活躍が減りそうな選手■ 
・ノヴァコヴィッチ…必要性は変わらないが、彼を置かないパターンを試合で組み込む場合プレータイムは減る可能性がある。
・長沢駿  …復帰組の瀬沼もそうだが、監督が長身プレーヤーをどう位置付けているかで今後が大きく変わってくる。
・杉山浩太…六平の方が現チームにおいては適しているかもしれない。チームの安定剤としては後半必要になるシーンも多そうだがどうだろうか?
・ 村田和哉…単にスペースが無いシーンが増えそう。後はどこまで打開できるかは彼次第。
・河井陽介…単に使い所が難しい。前で高木(善)の変わりに使う方が良い気もするが…中盤で六平・本田と競わせるべきか

何にせよ。色々な事がまだまだ始動したばかりのチームでこれから明確になっていくだろう。今日(8/23)の鹿島戦はもしかしたらズタボロにやられるかもしれない。まだまだJ1常連チームにはこのサッカーでは通用しないかもしれない。それでも、ユース世代で結果を残してきた監督期待を抱いて観ていきたい。

【この試合の選手評価】
5段階評価(◎○●△×)
● 櫛引…失点シーンはセットプレーからで仕方ないが大きなシーンもあまり無い。
○ 平岡 …縦に強く裏を取らせなかった。観る度に上手になっている気がする。
(個人的には櫛引より代表に近いと思う。このチームで代表にお試しで行けるなら大前か平岡だと思うくらい評価している。)
● ヤコヴィッチ…相変わらずの「残念そこはヤコヴィッチだ」 この日のセンターバック2人の評価は同じくらいだがカードの分下げた。
● イ・キジェ… 守備意識も含めかなり良くなっている。少し引いた位置での斜めのダイレクトクロスやサポートでのオーバーラップは有効に使えていた。反面、足元でボールを受けてしまうとクロスまでの遅さは相変わらず。前で述べた自身裏への確認共に改善できれば脅威になれそうだが…。
◎ 吉田…縦横無尽にサポート、オーバーラップ出来ていた。良い時の吉田だった。このチームスタイルは彼にとってやりやすそうだ。グランダーや早いクロスも有効に使えそうであり、バリエーションも豊富だった。
● 六平…○にしてあげたいけど期待を込めて●もう少しクラッシャータイプの仕事が出来そう。今後が楽しみ。
● 本田…展開を読んだパスが良かった。 あとは前にもっと絡むのか、絡まないならもう少し守備貢献が欲しい所。
○ 大前…相変わらず展開の読みやポジションチェンジ等で他を一回り圧倒している。ただ、この日はキレているという感じではなかった。
△ 高木(俊)…サイドに開くだけでなく中でも多くプレーしアイディアは見せたが形として何かを残せなかった。
△ 高木(善)…ポストワークに勤しむシーンも多く2つめ以降の展開への布石を作ろうと従事していた。ここに自らも行くシーンがあれば幅が広がりそう。
△ 石毛…札幌の奈良と空中戦を競り合わせるのは如何せん酷だが、本来の前線エリアで精力的に相手の背後への抜け出しや受け手の役割を全うしていた。まだまだやれそうなのでこの判断で。

× 村田…村田選手への当たりが厳しくて申し訳ないのだが、この日は彼の走れるスペースをキッチリ札幌に消された。右サイドのタッチライン付近で強引に突破を試みる以外はお客さんだった。 
○ ノヴァコヴィッチ…チームのスタイルに変化をもたらし、お手本の様な楔からチャンスを演出した。反面、中央に1枚入る事で流動性のある前線は少し落ち着く。どちらを主軸にするにしても使い所次第。
● 河井…これから彼をどう使うかがまだ自分には見えない。この日は守備で貢献していた。与えられた役割をきっちりこなした。